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デニムのように趣深い業界人のシトロエン遍歴

ある人がシトロエンというクルマを評したときの言葉。それは「世の自動車を大きく分けると2つで、それはシトロエンとそれ以外だ」と。

こんなにもユニークで趣深いクルマは、他に類を見ないだろう。mandoデザイナーの高巣 満導さんも、そんなクルマに魅了されたシトロエンニストでした。

ー 高巣さんの愛車遍歴の始まりを教えてください

実は、そもそもクルマ好きではなかったんです。 若い頃は洋服や遊びにお金を使うけど、そんなに裕福じゃないからクルマにまでお金がまわらない。

ところが当時『ALPHA CUBIC』という会社に勤めていたのですが そこには業界人や芸能人など、あらゆる富裕層の人が多く出入りしていました。 その中には雑誌『STYLING』編集長の石丸淳さんも出入りしていました。 石丸さんが真っ黒のルノー・アルピーヌA310を乗られていて、 それをみた瞬間、初めて「クルマっていいな」って感情を抱いたんです。

モケットのシートにモールを外したスタイル、マフラーなんかもいじってて、ちょっと小ぶりな雰囲気が目にとまりました。 「このクルマだったら俺も乗りたい」と思って、石丸さんに「売って欲しい」と懇願したところ たまたま手放すタイミングだったのです。だけど、既に売り先は決まっていました。

そこで売り先に掛け合っていただき、自分でも譲ってもらえるよう交渉して、ついに念願のマイカーを手に入れることができました。 ちょうど26,7歳の頃ですね。

ー シトロエンとの出会いのキッカケは?

その後、自分が『COHIBA』というブランドを立ち上げるタイミングで、出張先のロンドンで、ふと見かけたシトロエンDSに一目惚れしてしまい…。「なんだこのクルマは」と。

後に行った先のパリでも見かけたので、帰国してからは血眼になって探してみたけど、日本ではほぼ見かけない。たまたま雑誌で見つけた横浜の『ANTEA cars』というお店に問い合わせたら、黒ボディのDSが1台入庫するとのことだったので購入の意思を伝え楽しみに待っていたのですが、まさかのマルセイユの港で他に売られてしまったとの悲報が…。それでも諦めきれずに再び別の個体を探していたときに出会ったのが、僕にとってのファーストシトロエンとなる紺色のDS23インジェクションでした。

乗り出し当時は、インジェクションの言葉の意味もわからないし、そもそも操作や修理方法も不明。おかげでシトロエンについて、たくさん勉強させてもらいました(笑)。

このDSは、後にボディをマルーン(海老茶色)に全塗装したり、元は4速のセミオートマ仕様だったのですが、ヨーロッパで同じDS23を5速に改造している人がいるという情報を小耳に挟んだので、サンディエゴのシトロエン専門店『CCA』に持ち込み、自分も同じ仕様にするためミッションを載せ替えたりと、かなり手を加えましたね。日本でこの仕様を施したDSは、当時も今もおそらくこれ1台だけじゃないでしょうか。

ー そこからシトロエンの虜になられるんですね

旧いDS1台じゃ普段乗りは厳しいかな…ということで、埼玉の専門店でレストアを施したベージュのBXを購入しました。 生涯2台目のシトロエンですね。

2台所有したまま、次に購入したのがSMになるわけですが、これは最初に『ANTEA cars』にDSを見にいったときに お店の人が最寄り駅までクルマで迎えにきてくれたのですが、そのときに乗ってきたのがSMでした。 当時も心の中では「DSよりもこっちの方が格好いいな」と思ってしまったので(笑)

そのときの印象がずっと頭の片隅にあったので、続けてシルバーのSMを購入しました。 これにも意味があって、そもそもDSとSMは乗り心地も性能もすべて別物なので、 だからこそ2台を同時に乗りこなさないとシトロエンを理解できないと。

このSMは友人から「個人売買に出てるよ」と教えてもらったのがキッカケで 所有者に会いに現金を持って静岡まで友人二人と商談に行きました。 その場で即決購入して、そのまま自走で帰ってきたのですが 都内に戻り高速を下りたところでミッションが壊れましたけどね(涙)。

ー トラブルも含めて、シトロエンには話題が尽きないと思いますが シトロエンに乗られて以降、他メーカーのクルマに興味は抱かなかったのでしょうか。

修理のたびにいろんな代車には乗りましたが(笑)、シトロエンに乗ってからは、シトロエン以外に浮気したことはありません。

今は最後のハイドロシトロエンと謳われるC6に乗っています。僕は先述の通り、クルマが好きなわけでもなくメカに強いわけでもなかった。ただ、シトロエンが好きで、シトロエンを維持するために必要な構造を勉強して、そして自分で直せるようになっただけです。昔は部品調達のためにロンドンのアンドリュー・ブロディやフランスのジャン・ブロンド、ロスのCCAやベルギーまで訪ねたりと。

シトロエンに乗っていて嬉しいことは、小さな子供から大人まで、見る人みんなが「いいね」と言ってくれること。昔、青山で川久保さん(COMME des GARCONS)がGSを乗られていて、お互い面識もなかったのですが、対向車線からクルマを見て手を振っていただいたという思い出もあります。

あと、実用性を考えられて作られたクルマだから、廃れることなく実に品がいい。そういった点は自分のモノづくりにも影響を与えてくれました。

フランス人の気質なのか、シトロエンの秘密主義なところもいい。DSなんかはネジ1本も特殊サイズなので、シトロエンの専用工具じゃないと直せない。オリジナリティがあり仕事に対するプライドを感じる徹底した感じが楽しくていいですね。アヴァンギャルドだし、奥深いブランドのストーリーにも惹かれます。パリの老舗メゾンにも相通ずる、そんなイメージですね。

そしていつの時代も廃れないデザイン性、クルマの歴史に残る名車こそがDSです。

ー 医者や建築家、デザイナーに好まれるのがシトロエンという印象ですが、そういった才能あふれる方々を惹きつける理由はどういったところにあると考えられますか。

やっぱりプロモーションが洒落ていて斬新であること。当時の僕にはグッと心に刺さりましたね。

とくに60年代のシトロエンの広告は美しかったです。飛行機雲で「CITROEN」の文字を描いたりと、そのアイデアとヴィジュアルセンスが素晴らしかった。あとエッフェル塔にイルミネーションで「CITROEN」の文字を映し出したり。当時のカタログを沢山持っていますが、とにかくセンスがいい。

また、ある有名なアーティストはシトロエンの特許である「ハイドロ」(油圧)を風船や魚をモチーフにデフォルメした油絵にしてみたりと。デニムもそうですが、デニムには専門業者がたくさんあり、そこにこだわりのディテールが詰まっている。

シトロエンもデニムも奥が深く、オリジナルの個性を感じさせてくれます。

PROFILE
高巣 満導
ファッションデザイナー / mando デザイナー

1997年にファッションブランドmando設立。男性服、女性服の概念にとらわれなく流行にも左右されない時代の空気感を大切に表現したアイテムを世界中で展開する。自身のコレクションにシトロエンの要素を取り入れるなど、業界屈指のシトロエンニストとしても有名。

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