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世代の異なる2人のデザイナーによるデニム対談

ニューヨークで出会った2人のデザイナー、SAYORI TANAKAさん、KANAKO SAKAIさん。TANAKAさんは以前もご紹介させていただいた、NY発のユニセックスファッションブランド「タナカ(TANAKA)」のデザイナーでNYを拠点に活動。SAKAIさんは2022年SSより新たにファッションブランド「カナコサカイ(KANAKO SAKAI)」を立ち上げました。お互いのブランドコンセプトで共通している“これまでの100年とこれからの100年を紡ぐ衣服”、“時間を超えて愛される服”というキーワード。世代の異なる2人ですが、お互いの環境や考え方にインスピレーションされることも多いそう。そんな2人に自身のブランドやデニムに対する考え方など伺いました。

 

—本日はよろしくお願いします。まずはお二人の出会いの経緯からお聞かせください。

TANAKA:ニューヨークのバーで、共通の友人であるジャズアーティストの演奏をお互い聴きに来ていたところ出会いました。ニューヨークでは、一人でふらっとバーに行ってそこでお友達になったり、仲良い子とキャッチアップするというのが日常の風景で、そんな音楽や人に対しての気軽さがニューヨークの好きなところです。

SAKAI:私は当時パーソンズ美術大学を卒業して、ニューヨークで過ごしていました。毎週、彼の演奏を聴きに行っていて、その日もふらっと一人で行ったらTANAKAさんがいたんです。

TANAKA:年齢はひとまわり以上違うんですが、何かお互い通ずるものがあったのかその日からよく一緒に過ごすようになりました。

SAKAI:出会ったその日、TANAKAさんがすごくフレンドリーに接してくれたんです。波長がすごく会って、すぐに意気投合しました。その日からずっと仲良くしていただいてます。

TANAKA:SAKAIさんが学生を卒業したばかりだったので、ニューヨークで撮影をする時は手伝いにきてもらったこともあります。今はTANAKAの日本事業もすごく忙しいので、そこでも時々サポートしてくれています。彼女は当時から自分のブランドをやるという夢があり、この度ようやく立ち上げられたので、今では仕事仲間として情報交換したりもしていますね。

2022年のSSシーズンから自身の名前を冠したブランドをスタートするSAKAIさん。デザイナーになった経緯を教えてください。

SAKAI小学生の頃からファッションが大好きだったのですが、ファッションデザイナーになるという選択肢が自分の中で全くなく、日本の4大に入学しました。でも何か違うなとずっと感じていて。本当に自分は何がしたいのかと考えたときに、ファッションデザイナーならやれる気がする、向いてる気がすると、ある日直感で感じました。私の中ではファッションデザイナーになる=自分のブランドを持つ、という考えでしたので、それからは夜間の服飾専門学校に通い、ダブルスクールをしました。卒業後ニューヨークへ行き、また大学に入学してファッションを本格的に勉強しました。その後、経験を積み自分のブランドを立ち上げ、とにかく突き進んできて今に至ります。

—ブランド立ち上げの際、TANAKAさんからアドバイスをいただくこともあったんですか?

SAKAI私のブランド立ち上げのタイミングでTANAKAさんがミラノにいたのでzoomでオンライン会議をしました。服作りならできるんですけど、ブランドとして立ち上げるとなるとやることや決めることが多く、いろんなことを相談しました。作り手の考え方として、何もない0の状態からどうやって1にしていったのかなども聞きました。

TANAKALOOKのモデル選びや写真、作った商品をどうやって売っていくかなど、一つ一つが大事だと思うので、その選択の仕方をどうしていくかですよね。私の経験も話しつつ、今はいろんなやり方や見せ方があるので、自分の考えや、世代も今いる場所も違う彼女ならではの選択があると思います。私も彼女の考え方を聞いていると、興味深くて面白いです。

—お二人のブランドコンセプトには、流行、世代を超えて愛される服作りをしたいという共通点があると思います。サスティナブルが叫ばれる今でこそ身近になった考え方ですが、TANAKAさんはブランド立ち上げ当初から同じコンセプトなのでしょうか?

TANAKAブランド立ち上げの2017年から同じコンセプトでやっています。立ち上げもニューヨークからで、場所の影響は大きいと思います。あの街は性別も年代も自分の好きなファッションも何着てもいい、みたいな空気感があってフラットでボーダレスですね。トレンドを追い続けて、来年着れない物を作る。そういう仕事に自分が就くのはどうなのかという疑問は、学校を卒業する20歳頃すでに感じていました。そんな自分がニューヨークで感じたことを日本人として世界に発信したい。その発想からもこのコンセプトが生まれました。

—最近は大きな企業が”良いものを1つ買って長く着て欲しい。それが本当のサスティナブルだ”というようなテーマを掲げているのを目にしました。

TANAKAただずっと長く着られるというだけでなく、洋服を着る喜びや楽しみを与えられるようなスペシャル感やエキサイトメントを加えたい、ということもいつも考えていることです。

—本日の2人のデニムの着こなしポイントを教えてください。

SAKAIデニムはLee ® x Almondで私の彼が15年ほど前に買ったものです。立体裁断で作られていて穿き心地がよく、当時の自分にとっては高価だけど良い買い物だったと言っていました。ワッペンがたくさんついていたり、身頃をわざと捻って縫い合わせてあるのが私にとっては新鮮ですね。メンズサイズなので普通に穿くと大きく、ベルトをしようかと思ったんですが、ウエストが絞られてせっかくのデザインやシルエットを損なってしまうのでサスペンダーで形を保ったまま着ています。サスペンダーはジャケットで隠していますが、見えても可愛いかなと思います。

TANAKA(SAKAIさんのスタイリングを見て)黒のジャケットを合わせて綺麗に着ているのが良いですよね。いまサスペンダーを使うのは新鮮で面白い。最近、私は黒を合わせることが多いですね。ブラックにホワイトデニムやトップスにデニムジャケット、黒いワンピースとかです。

SAKAISAYORIさんは光沢感×カジュアルなスタイルのイメージがありますね。

TANAKA確かに。合繊やサテンを取り入れたりというような質感ミックスは、TANAKAにも取り入れたい要素です。

 —生地が好きだというお二人ですが、ご自身のなかでデニムはどのような印象ですか?

SAKAI:正直、デニムはあまり詳しくなかったのですが、TANAKAに携わらせてもらっていくうちにデニムってなんて完成されたプロダクトなんだと感銘を受けました。デニム好きな人って育てていくストーリー性に魅力を感じる方が多い印象です。私はどちらかというと生地そのものが好きなので、育てていくとは違う私なりのアプローチでデニムを作ってみたいと考えています。

TANAKA知り合いに、ヴィンテージに限らず様々なデニムのアーカイブを所有している方がいまして、年代毎に流行ったジーンズを持ってらっしゃるんです。例えばトゥルーレリジョンとか、私たち世代にとっては通ってきたプロダクトだけど今の子が見るとあの太番手のステッチが新鮮なのではと思います。一世を風靡しただけあり、とても完成度が高いプロダクトなんですよね。流行はサイクルで回っていくものなので、例えば太番的なものもモードっぽく使えたら面白いし、新しいインスピレーションにもなり得ますね。

ーお二人が過ごしたニューヨークの街の人々は、ファッションに対してどんな考え方なのでしょうか?

SAKAI ニューヨークの人は全員デニムを穿いている気がします(いつも同じ服を着ている人もいたり、みんな好きな服を着ているイメージです。ほかの人の目は気にしていないです。

TANAKAニューヨークコレクションもあるし、メゾンブランドのデパートなども身近にあるけど、前提としていろんな国の人がいて似合う色も違うし、購入した国も違うかもしれない。それぞれのスタイルはかなり違ってボーダレスな感じがとても心地良いです。

—最近では、日本でもボーダレスという言葉をよく耳にするようになりました。実際お二人が日本人のファッションを見て、そういった考え方に近づいていると感じますか?

TANAKA日本は綺麗めなスタイルが台頭していると思います。若い子の中には、その反動かダークでタトゥーやゴスロリっぽい要素がある子や昔の原宿系みたいな子もいて、2極化しているように感じます。

SAKAI一部の若い男性は化粧やヒールなど、中性的な新しい時代のファッションを楽しんでいて良いなと思いますね。女性はフェミニンな要素やいわゆる“女性性”を出すようなファッションがいまだ強いように感じます。

TANAKAいわゆるデニムが大人気といった、流れではないのかもしれないですが、世界的に見たらいつも皆のワードローブには必ずあって、週に数回穿く人も多い、生活の身近にあるデニム。私はデニムが本当に大好きな素材で、TANAKAでは、デニムやジーンズといった工業製品に近いプロダクトだからこそ、デニムをキャンバスのようにしてアート的なアプローチを追求しています。加工屋さんと協業して、ペイントのような新しいテクニックや資材を使った変わった加工だったり。こういった考えでデニムの可能性も広がって見えるのではと思っています。この先のシーズンでデニム人気再熱なんていう情報もありますし、作り手としてこれからもデニムが魅力的に見える方法を探っていきたいです。でもただ佇んでいるのが、すでに十分カッコ良いのがデニムで、それは今までの100年もこれからの100年も変わらないだろうと思っています。

ありがとうございました。

PROFILE

 SAYORI TANAKA  「これまでの100年とこれからの100年を紡ぐ衣服。時代、性別を超えて永く愛される衣服」をコンセプトにしたユニセックスのブランド「TANAKA」を2017年からニューヨークにてスタート。

HP : tanakanytyo.com

Instagram:@tanakanytyo

KANAKO SAKAI /  ニューヨークや東京のデザイナーズブランドで経験を積んだデザイナーのサカイが、日本的美意識を取り入れながら、都会的かつリラックス感のあるウェアを提案する。2022年春夏にデビュー。

HP : kanakosakai.com

Instagram:@kanakosakai_official

 

Photo by @tokimatsu_aoi

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