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樅山敦による連載企画

BARBER BOYSの樅山さんによる連載企画、「映画とデニム」。映画やファッションにも造詣が深く、デニムの魅力が存分に味わえる映画をコラムと共に紹介します。

Blood In Blood Out / T.ハックフォード監督作品 / 1993年公開

 

アメリカ文化の払下げをカスタムしまくるチカーノ

1972年、メキシコ系アメリカ人が居住するイースト・ロサンゼルス、チカーノというギャングスタと警官と画家との人間模様が複雑に絡み合う作品。YouTubeに落ちてるから是非観てほしい。生きる目的はさまざまだと思うが、自分はどうやら警官になったパコに共感したようだ。巷のストリート・ギャングが集まり、薄く連帯してああだこうだいいながら、法を犯して金持ちを目指すのも醍醐味ではある。けれどチカーノの交流は、その何十倍も濃いようだ。タイトルの「血により入り血により出る」すなわち殺人や流血で入会し、脱退しようとした者は殺されるという危険が伴う。どんな状況でもボスの指示を確実に実行すればライズアップできるのだ。自分のまわりにもチカーノみたいな人間がいた。1972年、炭鉱で稼いだコール・マイナーズが家族を持ち居住するいわき市常磐地区。そこで生まれ育った小学生の自分たちには楽しみがあった。夕方になると全身和彫にタンクトップ、チェックのバミューダパンツにティアードロップ、グリースよろしくオールバックでホンダのゴリラ50ccを乗り回しピットブル2匹を散歩させる常磐チカーノ 。そうワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドでブラッド・ピットが飼ってた犬だ。自分たちも真似てタンクトップにバミューダパンツ穿いて強面のピットブルと戯れながら一緒に走るとテンションがアップしたのを覚えている。最初は怖いが慣れてくると本当に可愛い奴ら、非常にドリーミーな体験だった。同じ頃ロサンゼルスのチカーノたちは独特のスタイルで車高を落したローライダーのインパラを乗り回していた。差し当たりゴージャスなナイト・クルージングはキッド・フロストに任せたとして、サイズ・アップのデニム・コーチジャケット、トップ・ボタンのみ留でワーク・パンツにネイビーのバンダナ。またはビッグ・シルエットのワーク・シャツにパンツはデニム、ヘアはフェードなしで極端にツヤが出るグリースを塗布したビッタビタのオールバック。ヘア、アイブロー、髭のアウトラインを神経質に整えた極上のスタイルだ。そうそうピットブルのチカーノおじさん、ある日を境に見なくなった、どうしてるだろう。

番外編 〜Spotify〜ボクのサントラ「Blood In Blood Out

ここからは番外編、『ボクのサントラ「Blood In Blood Out」』と題した、同映画の世界観を踏襲したセレクトをしました。今回はチカーノ R&B、HIP HOPのレーベル「Thump Records」からの選曲。チカーノはクルマやファッション、音楽までもアメリカの払下げをカスタムして甦えさせる天才。横浜のカルチャーにも影響を与えた。是非、拝聴ください。

PROFILE
樅山敦

福島県いわき市出身。1989年からヘア&メイクアップアーティストとしての活動をスタート。2007年代官山にオープンした理髪店「BARBER BOYS」オーナー兼プレイヤー。2016年男性整髪料ブランド「CHET」のディレクター。2021年Panasonic バリカンのヘアスタイル監修も務める。

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